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好きと依存は紙一重
第4章 一難去ってまた一難
(アタシも歳を取ったってことかな? それとも、都会慣れしたとか)
 思い出に浸りながら時の流れを感じていると、誰かが未亜の腕を掴んだ。突然のことに、思わず悲鳴を上げる。
「ちょっと、悲鳴なんて上げないでください。こちらは先程から何度も声かけてたんですから」
 愛らしくも不満げな声は、標準敬語を喋ってはいるものの、京訛りが滲み出ていた。もしやと思ってそちらを見ると、若草色の着物を着た花梨が、むすっとした顔で未亜を見つめていた。

「あなたは……」
「花梨と申します。あなたに、お願いがあるんです」
「お願い……?」
 真剣な花梨の目と”お願い”という言葉に、胸騒ぎがする。同時に、昨日の連の寂しそうな顔を思い出す。

「ここではなんですから、場所を変えませんか?」
 そう言って、花梨は未亜の腕をつかむ手に力を込める。絶対に逃がすかという意志が、気迫となって未亜に伝わる。
「それはいいけど、手、離して。痛いんだけど」
 平静を装ってそっけなく言うと、花梨は眉間にシワを寄せる。

「逃げずにちゃんと聞いてくれますか?」
「どうしてアタシがあなたから逃げないといけないわけ?」
 腹が立って挑発的に言うと、花梨の目が吊り上がり、みるみるうちに顔が赤くなっていく。
「ずっと無視していた人が言う言葉ですか?」
 責め立てるような花梨の言葉に、彼女が何度も声をかけていたと言っていたことを思い出す。

「あれは考えごとしてたんだよ」
「それは、連様のことですか?」
 花梨の口から連の名前を聞き、息が苦しくなる。何故こうも苦しくなるのか理解できずにいると、それを咎めるようなため息が聞こえた。
「あなたみたいな人が、どうして連様の隣にいるのか、まったく理解できません」
 冷たい花梨の声に、怒りと悲しみが同時にこみ上げて来る。気がつけば花梨の手を振り払い、その手を掴み返してずかずかと歩きだしていた。
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