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好きと依存は紙一重
第4章 一難去ってまた一難
「痛っ! ちょっと、どこ行くんですか?」
「静かなとこ」
 未亜はそれだけ言うと、黙々と歩く。花梨が腕を離すように何度も訴えるが、聞こえないふりをする。花梨も諦めたのかやがて静かになり、大人しくついてくるようになった。
 繁華街をすり抜け、裏路地に出るとようやく花梨の手を離した。

「な、なんです? ここは」
「裏路地。見て分からない?」
 イライラが増幅し、花梨のような清純そうな女性への苦手意識も相まって、つい喧嘩腰になってしまう。花梨も負けじと未亜を睨みつける。
「そういうことを言ってるのでは……はぁ、いいです……。早速本題に入りましょう。単刀直入に言います、連様を返してください」
「は?」
 ふつふつと怒りがこみ上げ、気がつけば花梨の胸ぐらを掴んでいた。花梨は一瞬たじろぐも、未亜を睨みつけるのをやめようともしない。

「返せって何? アタシが連を留まらせてると思ってるの?」
「あなたはあろうことか連様をたぶらかし、思うようにしているのではありませんか? でなきゃ、連様がこんなところに……」
「ふざけるな!」
 一方的に濡れ衣を着せられ、怒声を上げる。胸ぐらをつかむ手に力が入った。

「アンタ、分かってないよ。連は自分の意志で東京に来たんだ。連は誰よりも努力して、自由時間もロクになくて、すべてを日舞に捧げてきた。そんな連を、誰か褒めてくれた? 認めてくれた? どんなに上手にできても、どんなに客に褒められても、調子に乗るなって父親に言われて……。そんな連が、ようやく東京で居場所を作ったんだよ!」
「……それは、確かに、連様はご自分の意志で東京に来られたかもしれません。ですが、本当に住もうと思っていたのでしょうか? あなたが連様を言いくるめて住ませたのではないですか? でなきゃ、連様が日舞の世界から消えるとは思えません! それに、髪だって、あんな色に染めてしまって……。あんなに真面目な人が、自分の意志で髪を染めるはずがありません!」
 花梨はひるむことなく、未亜の肩を掴みながら言い返す。どうしても自分を悪者にし、連をあの地獄に戻そうとしている花梨に、殺意さえ芽生えてくる。
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