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好きと依存は紙一重
第4章 一難去ってまた一難
「連はアンタが思ってるほど、聖人君子ではないよ。連にどんな幻想抱いていたのか知らないけど、それを押し付けるのは連に失礼だよ。それじゃ」
 未亜は冷たく言い放つと、立ち上がって花梨に背を向け、大股で歩き出す。花梨が未亜を呼び止めるが、未亜は聞く耳を持たない。一刻も早くこの場から立ち去り、連に会いたかった。

 気がつくと未亜は、jesterのビルに向かって走っていた。体力のない彼女は時折立ち止まっては息を整え、再び走るを繰り返す。ビル前に着く頃には、脇腹が痛み、汗で服が張り付いた。
 ドアの前に立つと、団員達が発声練習をするのが聞こえる。ドアを開けようとすると、階段を駆け下りる足音が聞こえてきた。そちらを振り返ると、連がクリアファイルを抱えて駆け下りて来るのが見える。未亜はすぐさま連に駆け寄り、思いっきり抱きついた。

「うわっ!? 姫さん、いきなりどないしたんどすか?」
「会いたかった……」
 か細い声で未亜が言うと、連は黙って彼女を抱きしめ、背中をさする。
「姫さんがうちに会いたがるやなんて、珍しいどすなぁ。なんかありました?」
「ううん、何でもない……」
 強がってみるものの、濡れた声音で連は何かを察してしまっただろう。それでも彼は問い詰めずに、黙って階段を指差した。

「そうどすか。少し、2階でゆっくりしていきます?」
 無言で頷くと、連は未亜の肩を抱いてエスコートしてくれる。台所に着くと、やかんでお湯を沸かした。
「アタシって本当に自分勝手。連が好きでいてくれてるのに、好きになれない。そのくせ依存して、連がいなくなったらどうしようって勝手に考えて、勝手に病んで……。バカみたい……」
「姫さん、うちはね、あんさんねきにいられれば、それだけで幸せなんどすえ。姫さんはうちの心の恩人で、おもろい話をぎょうさん書けて、神様みたいな存在なんどす。そないな姫さんがそばにおって、うちが作ったjesterのために脚本を書いてくれて……。これ以上望んだら、バチが当たりますえ」
 慈しむ様な連の瞳に心が揺さぶられ、泣きそうになって顔をそらす。そんな未亜の心境など知らない連は優しい手つきで頭を撫でるものだから、堪えていた涙がポロポロと零れ落ちてしまった。
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