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第30章 出張中に

翌日、広美は仕事を終え、出張に向かう健治を駅まで見送りにきていた。

見送りといっても、大袈裟なものではなく、単純に駅まで付いていき、いってらっしゃいと言う程度のものだ。

「東京のお土産楽しみにしてるからね、気を付けてね」

健治は笑顔で応える。

「おう、お土産楽しみにしてろ」
「広美こそ、体には気をつけろよな」

広美は笑顔でうなずいた。

(二人きりだったら健治さんとキスぐらいしようと思ってたのになぁ…)

広美は横に立っている太田を恨めしそうにみた。
太田は広美が見送りにいくのを嗅ぎ付け、嫌がらせで健治の見送りに来ていた。

「先輩、出張頑張ってください」
「出張中は広美ちゃんの面倒、俺が見ておきますから」

健治は太田なりのギャグだと思い笑いながら、太田に返事をした。

「あぁ、広美の事は任したぞ」

広美は二人の会話を聞き、あまりいい気分はしなかったが、二人にあわせて愛想笑いをしておいた。

健治は電車の時間になり駅に入った。
広美は太田と二人きりでになり、気まずくなりさっさと帰ろうとした。

「よし、広美ちゃん、三回目、今からやるぞ」
「先輩からも任されたからな、今日と明日の連続だぞ」