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不埒に淫らで背徳な恋
第5章 【贖罪することが救いなのでしょうか?】
土下座しているお義母さんを横切り、部屋の隅っこで力なく座り込む稜ちゃんの前にしゃがんだ。
目を合わせてくれないままだけど、震える手を思いきり振り落とした。
最初で最後のビンタ。
こんな直後だから痛くもないだろうけど。
気の済むまで二度…三度と叩く。
「バカ……っ!バカ……っ!」
肩や胸を叩いてもちっとも晴れない。
同じように涙を流す稜ちゃんはただごめん…と謝るばかり。
こんな終わり方したかったわけじゃない。
念の為…と私は両親にマンション前で待機してもらっていた。
時間を指定し電話をかけるよう頼んで通話記録を録音し、通話状態のままにしてボイスレコーダー代わりに会話を聴いてもらっていたの。
時を見計らって危ないと判断したら突入して欲しい…と頼んでいた。
危機一髪で助けに来てくれた両親には感謝しかない。
心配かけてごめんなさい。
でも警察は待って。
泣きじゃくる稜ちゃんを一度だけ抱き締めた。
「絶対に許さない……」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「もう二度と会うこともない……さよなら」
「わかった……ごめんなさい」
父には最後、警察で事細かく説明したくないし稜ちゃんを犯罪者にもしたくないと告げたらお義母さんにも土下座しながら礼を言われた。
その代わり、その場で離婚届にサインと捺印をさせ二度と関わらないと一筆書かせた。
呆気ない終わり……………
帰りの車の中で、涙は出なかったけどしばらく震えは止まらなかった。
ずっと肩をさすっていてくれた母にもっと早く助けられんでごめんね…とまで言わせてしまい情けない。
訴えたい一心で怒りを露わにしている父も、辛い思いをする私を想っての身を引く判断をさせてしまったことは本当に申し訳なく思う。
未遂だから助かっただけの話。
もし助けが来なかったら……?
私は犯された挙げ句、まだあのベットの上で縛られたままだった。
これ以上軽蔑したくない。
これ以上憎みたくない。
これ以上悲しみたくない。
これ以上罪を着せたくない。