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不埒に淫らで背徳な恋
第6章 【守るべきものがある人生は幸福ですか?】




掴まれていた手を解こうとしても離してくれないのね。




「痛い……離して」




「逃げないですか?」




「もう充分付き合ったでしょ?そもそももうひとつの我儘って何?」




素っ気ない態度を取っても全然効いてないみたい。




「少し歩いていいですか?」と手を引かれる。
いちいち胸が高鳴って煩わしいけど許しちゃダメなの。
線引きさせてよ。
突き放した意味わかってる…?




「ねぇ、離して…?ねぇってば…!」




指先から伝わる体温が苦しいの。
後で絶対に一人で泣くパターンだ。
もう、何なの?これ……
人気のない路地。
急に立ち止まるキミは力一杯、私を抱き締めた。




再び香るキミの匂いにどうにかなりそう。
お願いだからこれ以上踏み込んで来ないで。
今日で最後、来週からは福岡に行く。
そんな最後の夜にとろけさせないで。




「僕の最後の我儘……」




息が耳にかかる。
ひっついたところから心音が伝わってくる。
ドクドク……速い。
最後だから…?緊張してるの…?




「ちゃんと諦めます……向こうで頑張って一回りも二回りも大きくなってきます…!だから、最後に最高の思い出くれませんか?」




え……?どういう意味……?
それって私に出来ることなの……?
どうする…?どう答えるべき…?




見つめ合ったらもう逃れられない。




「今夜で最後にしますから」




その意味が何なのかわかってしまった。
やっぱり……想定通りの展開だ。
もうひとつの我儘ってそういうこと。




髪にキスされてまだ抵抗するフリ。




「もう一度だけ……僕を愛してください」




こんな至近距離で言わせてしまった。
身体の芯が疼く。




「そんな顔するなんて……やっぱり嘘なんじゃないですか」




「違っ…!」




必死に隠そうと顔を上げたらもう唇が重なっていた。




ダメ……っ!
離れようとしても強くてビクともしない。
なのに絡んでくる舌が優しくて力が抜けていく。





久しぶりのキス。




今まで強がっていたもの全てが崩れ去るのなんて一瞬なんだ。
徐々に浸透してきて怖い………耐えれなくなる。




無理やり唇を離して距離を保とうにも、この瞳を見ると動けなくなる。













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