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不埒に淫らで背徳な恋
第7章 【愛欲に溺れるのは不修多羅ですか?】

“チーフ可愛いです、大好きです”
あの声……あの顔で言われた。
あの瞳で私の心を鷲掴んで離さない。
あの唇に触れたらもう最後。
あの火照る身体を忘れられるはずがない。
年下が良いとかじゃない。
私は………佐野くんじゃなきゃダメなんだ。
今もこうして鮮明に思い出してバカみたいに欲してる。
同じセリフを田中くんに言われてハッとした。
ごめんなさい……
私はやっぱり、佐野くん以外は無理みたい。
それがはっきりわかった。
「田中くん……ごめんね?私、」
「僕じゃダメですか?」
「え……?」
好きな人が居るからって言おうとしたのにまたしても似たようなセリフ。
熱っぽい視線が私を捕らえる。
この状況、なかなかヤバい。
いつもと違う……真剣な顔。
これ、酔ってて魔が差すってやつかな。
ここではっきり言ってもちゃんと記憶ある…?
「結果はわかってるけど……どうせなら言わせてください」
「え、ちょっと……」
待って、めっちゃ顔近付いてきたから逃れるように後ろに下がったらお約束の壁ドン。
「好きです……」
「うん」
これ、キスされる流れじゃないよね!?
ていうか田中くん、目が据わってる…!
「マネージャーのこと、大好きで仕方ないです」
あ……こういうのも言われたっけ。
いや、今ここで佐野くんと重ねて見るのは田中くんに失礼だ。
「うん、ありがとう」
「本当ちゃんとわかってますかぁ?」
わわ、更に顔が近付いて来て背けたけどそのままズルッと力が抜けて胸に顔を埋めてきた。
まだ頬が赤くて酔ってる様子。
ムニャムニャと寝そうな勢いだ。
態勢を戻すのも一苦労。
かなり寄りかかられてしまっている。
「チーフ………」
ぼんやり呟いた田中くんの声。
以前はそう呼ばれていた役職。
その頃から想ってくれているのも知っている。
あれも確か飲み会の席だったけど、田中くんの日頃の視線に気付かない私でもない。
この際だからってお胸を選びましたか。
あざといね。
結果はわかってるけど…ってもう気付いてるんだ。
そう言われたら振りにくい。
傷口に塩を塗ってえぐるようなものだもん。

