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不埒に淫らで背徳な恋
第8章 【本能のまま乱れ咲くのは愛と呼べるでしょうか?】

「朝の珈琲です、どうぞ」
「ありがとう、田中くん」
その笑顔、癒やされる。
自然とこっちも笑顔になるんだよ。
微笑んだ後ハッとした。
こういうのがイケナイんだったっけ!?
前に田中くん本人から朝の笑顔がどうとか…聞いた気がする。
思わず二度見したら優しく微笑み返されてデスクに戻って行った。
「佐久間、次の新人研修来月決まったけどいけるか?第2月曜と火曜」
今度は斜め横に座る部長から。
「え、また一泊二日ですか?」
「今回は人数増やしてるみたいだぞ」
「そんな新人だらけなんですか?本社は…」
「あまりにも好評らしくてな、希望者が出てきたんだとよ」
社内教育に力を入れるのは良いことだけど何となく上手く使われているような。
スケジュールは先に押さえられてますよ、部長。
人数増えてるのは初耳でしたけど。
あれから何度か本社には足を運んでいる。
いずれも出くわすことはなかった。
噂話も耳にしなかった。
最初に聞いた、海外に飛びまくっているという話だけ。
ホッとする気持ちと羨ましい気持ちが共存している。
海外生活……憧れもある。
成功してるんだって思えば嬉しいけどやっぱり考えるたびにまだ胸がギュッとなる。
毎回いつもヒヤヒヤしながら本社行ってるなんて誰も思わないだろうな。
「大丈夫です、空けておきます」
仕事だから仕方ない。
そう割り切るしかないじゃない。
例え本社で鉢合わせしたとしても、
普通に挨拶くらい出来れば………
前に一緒に働いていたし仕事を教えた仲でもある。
でも普通って何…!?
どう振る舞うことが普通なんだろう。
今日の月島くんや田中くんのように目を見て話せるのだろうか。
心の準備は出来てるの…?
声が上擦っちゃうとか逃げ出しちゃうとかしかねないだろうか。
時計の針はもうすぐ10時を差していた。
慌てて終わらせる。
パソコン持って移動しながら
「月島くん、打ち合わせしよっか」と声をかけた。
あーでもないこーでもないと次から次へと会話が出来てる。
大丈夫、普段通りの二人だ。
時折笑い合って議事録打ちながら具体案を述べていく。
これが本来の関係性なんだよね。

