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不埒に淫らで背徳な恋
第1章 【心の歪み、気付いてる?】




「いや、俺もさっき着いたとこだから」




帰宅ラッシュ時とあって人が多く行き交う改札前。
自然に手を取られ歩き出す。
朝のように咄嗟に避けてしまうのはさすがに申し訳ない。
いつまでも歩み寄らないわけにもいかないよね。




会話がなくてもずっと繋いでる手がちゃんと会話出来てた頃もあったな……
伝わってくる体温が心地良かった。
言葉足らずでも全然構わなかったよ…?
好きが溢れてた……




でも今は……?




繋がってる手からは何も感じない。
ただ無機質に歩いてる。
こういうの、しなくちゃ駄目…?
話したいなら話してよ。
このまま家に帰って無言で過ごすの?
それともまた平行線な話でもする?




私の気持ちは一体どこに置いて来ちゃったんだろう…?




駅を抜けて住宅街に入ったら人は疎らになる。




今までこんなことはなかったけど
自然とやってのけちゃうのはどうしようもないこと。
自分から手を離した。
触れ合うことが苦しく感じた。
立ち止まる稜ちゃんを横目に一人で先を行く。




つまらない意地やプライド云々じゃない。
一緒に居ることが辛い……息が詰まる。
好きだからこそ……好きだったからこそ平気で傷付けてしまうものなの?




顔もまともに見れないの……




ねぇ、一緒に居る意味ある……?





「瑠香…!」




背後から呼ばれても振り向けない。
立ち止まる私を抱きしめてきた腕。
身動き出来ないほど強く。
振り解かないのは最後の望み…?





「俺、瑠香を失いたくない」




背中から伝わる鼓動はうるさいほどだ。
緊張…してくれているのがわかる。




「こんなことで…俺たち終わる仲じゃないだろ?」




こんなこと……?




稜ちゃんにとっては、こんなことなの……?




「俺は瑠香が傍に居てくれたらそれだけでいい……他には何もいらないよ」




それって……どんな言葉より刺さるよ。




一番の罪。




気付かず……驕らず……平然な顔して過ごせるほど人間出来てないの。




「子供なんていらない……瑠香だけでいい」




本心じゃないくせに。
じゃあ、お義母さんの言葉は…?
何も否定出来てなかったじゃない。












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