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不埒に淫らで背徳な恋
第1章 【心の歪み、気付いてる?】




「本当、チーフは色んな顔持ってますね?何もかも一生懸命過ぎて…やっぱり目が離せません」




「え…?」




顔を上げれば近いことくらいわかっているはずなのに引き寄せられてしまう。




「少しは気が晴れましたか…?」




胸の奥がキュン…とするような表情。
真っすぐ過ぎる眼差しが動けなくする。





「今日は…チーフにとって忘れられない日になれましたか?」




温かい陽だまりみたいに包み込まないで。
夕日が黒い髪を明るく照らす。
見つめ合ったままの2人。




「バッティングセンターが頭に浮かんだら僕を思い出してください……一緒にホームラン打ったこと、笑い合ったこと、一緒にアイスを食べたこと…思い出してください」




心地良い声のトーンが私を麻痺させてるの…?




「最後の最後でこんなドジしちゃって迷惑かけたことも忘れないでくれたら嬉しいです」




「こんなの……迷惑じゃないよ」




やっとネクタイに視線を落とせた。
携帯用のドライヤーで乾かす。




「ありがとうございます」




完全に綺麗になったネクタイを見ながら嬉しそうに微笑んでいる。
静かに動き出した車内で動揺してることがバレないように報告メールを打つよう指示した。




忘れるはずがない。




こんな一瞬で、戸惑うくらい乱してくる。




忘れてた熱い気持ち……再燃させないで。




心の鍵……簡単にこじ開けないでよ。




お願いだから、一線引かせて。




女にさせないで。









予定通り部下を帰らせて自分も定時で退社する。




佐野くんのお陰で心は晴れたけど、今からが憂鬱だ。
なかなか溝は埋まらない。
所詮、夫婦は他人だ。
補い合えないこともある。




他人以上に他人になっちゃったら……?
素直になれなくて……妥協も出来なくて……
一緒に居るのが苦痛になったら……?




私、稜ちゃんの前でちゃんと笑えてる……?




もう少し時間が経てば何か変化があるのかな……?
私たち、あの頃に戻れるのかな……?




待ち合わせ場所に着くともう稜ちゃんは立っていた。
改札を通る私を見つけては真っすぐ見据えてる。




「瑠香、お疲れさま」




「待った…?」













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