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不埒に淫らで背徳な恋
第4章 【許されぬ略奪でしょうか?】

「わかりました」
「わからないことがあれば何でも聞いてね?絶対に一人で抱え込まないこと」
「はい」
「じゃ、早速今日の○○コーポレーション、一人で行けるよね?」
「わかりました、頑張ります」
そう会話したところで続々と他の社員たちが出社して来た。
挨拶が飛び交う中、
「田中くん、寝癖」とからかう。
慌てて鏡でチェックする田中くんを皆で笑う。
すかさず佐野くんがワックスを貸してあげてた。
お決まりのように場を和ませてくれる田中くんは有り難いね。
普通に仕事をこなして時間が過ぎて行く。
帰って来た佐野くんとも打ち合わせするしいつも通り接してる。
二人きりになることはないから昨日の話を持ち出す雰囲気など到底ない。
これで終わる……?
昨日散々悩んで取り乱したけどこのままフェイドアウトするの……?
「それではお先に失礼します」
「お疲れ様」
定時になり、皆帰っちゃった。
佐野くんもあっさり退社した。
この後の予定なんて聞けるはずもなく、まして私からメールする勇気もない。
携帯を握り締めたまま呆然と立ち尽くす。
どうしたらいい?
どうするべきなの?
身を引く…?離れる…?
引き返す…?
私たちは上司と部下なの。
それでいて私は既婚者。
わかってる。
私から動いちゃいけないことくらい。
毅然とした態度で跳ね返さなきゃいけないことくらい。
ねぇ、何で何も言って来ないの?
今なら電話出来るじゃない。
メールだって……いくらでも。
また困らせてよ………
名前……呼んでよ。
ダメ………この期に及んでまだ繋がろうとするの?
苦しめるだけなのに……?
彼だって一線引いてくれたのに……
なのに私は………
どうしてこの震えを止めれないの………
この想いを沈められない………
もつれそうな足が向かってしまう………
社員名簿は目を通してある。
逸る気持ちはどこにも置いていけない。
伝えたい………
迷惑だって百も承知だよ。
どう出るかは会ってみなきゃわからない。
会ってくれるかもわからない。
居ないかも知れない。

