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ブレインウォッシャー
第2章 新生活
 半年前とは比べようもなく荒んだ顔になっているが間違いなく若月嘉代子だ。姿を見なくなったと思ったら意外と近くに居たんだ。しかし、とんでもない男に目を付けられたものだ。my lord. の編集長はドSの上に金の亡者だ。本が売れるならM女に何をしても構わないと思っている。実際過去の企画には女日照りのホームレスの集いの中に裸で放り込まれ輪姦されたり比喩ではなく本物の犬、豚、馬等と獣姦させられた女のドキュメントがあったりする。
 「友妃。編集長に条件付きで部屋を提供すると返事してくれ。」
 さあ、楽しくなってきたぞ。
 
 若月嘉代子がスレイブの巣に来たのはゴールデンウィークの初日だった。今日から一週間、うちで一番広い複数人プレイ用のパーティールームは嘉代子の調教の為に貸し切りになる。
 午前10時。SMクラブのオーナーと編集長に連れられて嘉代子がやってきた。時間通りだ。部屋に入るなり羽織っていたスプリングコートを脱ぎ捨てる。下に着こんでいるのは安っぽい合皮のボンテージだ。嘉代子には新人女王様として一度思い切りM男を調教する体験を積ませると説明しているらしい。嘉代子は室内に居た俺をアゴで差し
 「今日のブタはこいつなの?」
 と、オーナーに聞いてくる。落ちぶれたくせに態度は半年前と変わっていない。
 「ご挨拶が遅れました。私当ホテルのオーナー澤村慎哉と申します」
 差し出した名刺を鷹揚に受け取りチラリと目を落とし動きが止まる。
 「こ、これは。」
 絞り出した声は震えている。
 「貴女から頂いた名刺ですよ。株式会社ETERNAL『元』代表取締役社長、若月嘉代子さん。」 
 かつての栄華を極めた頃の肩書きで呼ばれて口惜しそうに下唇を噛むがどうやら俺が誰かは思い出せないようだ。まあ、嘉代子にとってはあの位のトラブルは日常茶飯事だったのだろうから有象無象の顔など一々覚えていないだろう。
 「で?ホテルのオーナーが何の用のなの?」
 古い名刺を破り捨てながらふんぞり返る嘉代子の頬が俺の平手を受けて鈍い音を立てる。少なくても会社倒産までは親にも殴られた事がなかった深窓のご令嬢だ。何故叩かれたかと思うより何をされたかを理解出来てない。衝撃が去りじわじわと頬に広がる痛みに叩かれたと認識するまで十秒近くかかる。本当に愚鈍な生き物だ。
 「なにするの!」
 
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