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ブレインウォッシャー
第3章 けじめ
 なんとも情けない台詞に荒事専門だろう巨漢は油断する事なく注意深く近寄る。これがJチェーンの映画ならニヤニヤ笑いながら近付いてくる股間を蹴り上げアチョーホチョーハイィー!とたちまちやっつけるも更に降りてきた助っ人にボロボロにされて拐われるという件なのだが中学生にすら喧嘩で勝てる自信がない俺は無駄な抵抗はしない。素直にボディーチェックを受ける。出来るならグラマーな美女に触って欲しいところだが贅沢は敵だ。巨漢の手がジャケットの左の内ポケットで止まる。出てきたのは厚さ2cmの鉄板
 「これは?」
 大塚明夫ばりの美声で問われる。状況が状況なのに格好いいなんて思ってしまう。やはり俺はどこか壊れているようだ。
 「鉄砲で撃たれても生き残れるかなっと思って」
 「無駄だ。撃つなら腹だ。」
 「それなら大丈夫!」
 勝手に手を下ろしシャツを捲る俺に対して緊張が走るが俺が晒した防具を見て目を白黒させながら吹き出した。
 「これはドスで刺されても平気なようにか?」
 呆れ声で問いながらズボンに差し込んであった分厚い月刊少年漫画誌二冊を引き抜き捨てる。
 「そうだよ。あ!それ未だ読み終わってないんだよ。捨てないでくれよ。」
 ベルトを締め直しながら頼むが無視された。くそ!先月号はもう本屋に並んでないんだぞ。
 ボディーチェックを終えると後部座席に巨漢二人にサンドイッチにされて座る。本来なら三人並んでも広いシートなのに萎びたキュウリみたいに身を細めないと座れない。もうちょっとダイエットしろよ!体脂肪率一桁だろう二人に似合わない悪態を腹の中でつきながら車が目的地に着くのを待つ。数十分のドライブだったが意外とお喋り好きな巨漢二人が「冥土の土産」にと色々話をしてくれたお陰で退屈しなかった。
 オークションで若月源一郎が嘉代子を見つけたのは全くの偶然だった。慰み物に新しい牝犬を探しに来てみたら勘当したとはいえ可愛い孫娘が僅か50万円スタートのオークションで一万円、五千円と熱のない競りに掛かってる。驚いて思考が止まり何も出来ない内に59万3千円で落札されそうになり慌てて500万円で買ったのだ。
 家に連れ帰っても奴隷の挨拶を繰り返すだけで話しもできない。落ち着きと正気を取り戻し目の前に居るのが祖父だと気付くまで半日かかった。
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