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わたしを見ないで
第4章 指名返し
 7日ぶりの休日は、宅配の受け取りと掃除洗濯と睡眠で消えた。

 入店してからまったく自炊できてない。
 冷蔵庫の中の小松菜が黄色くなってしまっているのを見て、わたしは深くため息を付いてからゴミ箱に捨てた。

 お母さんからのLINEには毎日「なんとかやってるよ」「大変だけど楽しいよ」と返信してる。
 お母さんはわたしのことを高卒でコールセンターの派遣バイトと一人暮らしを始めた娘だと信じて疑うこともないだろう。


 シティヘブンに写メ日記を投稿してから、わたしまた…今度はカウンターキッチン内の蛍光灯に五千円札を透かして樋口一葉の顔を眺めていた。


 昨日の篤志くんは、わたしのスカートの飾りポケットに五千円札を突っ込んでいた。洗濯の時に気付いていなければ、危うく洗濯機の中でグシャグシャになっていたところだ。


 一体いつ、入れてくれたんだろう?
 このお金は本番行為に対する対価のつもりなのだろうか?
 わたしが要求したわけでもないのに?
 それとも単純にチップなのかな?


 “わたしを嫌ってる一途な篤志くん”というワードを思い付き、一人でクククッと肩を震わせる。


 今回は財布に入れずに、預金通帳…にも挟まず、ディズニーランドのお土産の缶カンの中に小銭と一緒に入れておいた。
 ある程度貯まったらお父さんとお母さんと3人で金沢にカニを食べに行きたいな…なんて思った。



 アマゾンから届いたばかりのファイヤースティックをTVに設置したころ、時刻は21時を回っていた。

 篤志くんはもう寝ただろうか。

 大好きなユーチューバーの最新動画をテレビ画面で観覧しながら、わたしは篤志くんの指を思い出して…そっとショーツに指を忍ばせた。




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