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掃き溜めの星屑
第1章 掃き溜めの星屑
 池田くんはやっと少し眠って、起きて、スマホをいじって、煙草を吸って、またスマホをいじって、残りのポッキーを2本食べた。


「そろそろ訪看さん来る時間だし、帰るね」


 ベッドから抜け出したわたしを追いかけるように池田くんはマンションの下まで見送ってくれた。


「今日学校来れそう?」


 わたしの質問に池田くんは頷く。


「うん、たぶん。生きてたら」


 池田くんの長い前髪の隙間から笑顔が見えた。


「とか言ってさー。なんかちょっと、切ってスッキリした感じ?」


 茶化すと、池田くんはもっと笑った。


「うん。血を出したからスッキリした。もう一度おれの命がはじまったみたいだよ」


 二人でクスクス笑った。
 また夜の教室で会えるけど、別れは名残惜しい。
 お互いいつどこで、唐突に別れが訪れるか分からないから。背の高い痩せた池田くんに抱きつくとき、わたしの心はどちら側にあるんだろう。


「また誰も見てないときに、教室でキスしようね?」


 わたしたちは社会のゴミ。お荷物。役立たず。掃き溜め。お互い惹かれ合ってもなんの生産性もないゴミクズ。


 でも、わたしたちはまた夜の教室で肩を並べる。
 【あちら側】と【こちら側】の狭間で生きるために。


「うん、しよう。じゃあ、また夜に学校でね」



 わたしは池田くんが好き。
 わたしの命もはじまったばかりだ。





【掃き溜めの星屑】
 


 
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