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地味子が官能小説を書いたら
第3章 片思い

---------- 【序】秘密のバイト⑤ ----------

「あの、撮影って、何ですか?」

「わたし、今日は面接で伺ったんですけど」

エレベーターに乗りながら、紗栄子は、杏果に尋ねた。

「面接……」

ふうぅ~、とため息をつくと、杏果は(やっぱりか)と言った表情をした。

「社長には、今日、新人の女優さんが来るから、連れてこいとだけ言われたの」

「女優って、何の撮影なんですか?」

「アダルトビデオよ。それも聞いてないわよね?」

「はい、何も……アダルトビデオなんて、わたし、むりです」悪い予感しかしない展開に、紗栄子の不安は増す。


「私は連れて来いと言われただけだから、社長に断ってください」

「でも、なんだか、怖いです」


エレベーターは無情にも10階に到着する。杏果は構わずに廊下を突き進んでいった。

すがるように追いかける紗栄子に、杏果は不意に立ち止まり、少し優しいトーンで話しかけた。


「大丈夫よ、ハッキリと断る人を無理に出演させたりしないから」

「それに、あなたが出演できない場合の保険もあるの」

「保険って?」


「私が出演するのよ、こういう事はたまにあるの、だから、あなたが無理でも撮影ができないわけじゃないのよ」

「でも、杏果さんは平気なんですか?」


杏果は微かに口角を上げ、苦笑いする。

「まあ、あまりやりたくはないけど、仕事だし仕方ないと思っている」

「それに、私が臨時で出演した場合、ギャラが新人さんよりも上増しされるから、まあ、懐が潤うのよ」


「ギャラって、そんなに良いのですか?」


「ええ、新人さんでも15万かな、交通費も一律5000円出るし」


(15万!)紗栄子の2か月分のバイト代だ!


でも、さすがに人前で裸を晒すのは嫌だ。それに、裸を晒すだけでなく、セックスまでしなければいけないのは、絶対に無理だ。

紗栄子は、欲に膨らんだ己を律するかのように首をブンブンと振った。


「ここが女優さん用の部屋、ここで待ってて、ドアは開けたままでね」

杏果が指示した部屋と、その先にもう一部屋、そして一番奥の部屋が扉が開いたままになっている。杏果は紗栄子を残したまま隣の部屋へと入っていった。

(どうしよう……杏果さんはああ言ったけど、本当に無事に帰れるのかな……)




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