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化け物
第1章 化け物
 聡はかつて、神童と呼ばれた子供だった。
 4歳ですでに四則演算を習得。
 聡はなにか教えればすぐに理解できた。
 聡にとって、小学校受験など容易いものだった。



 名門小中高一貫校に、幼児教室なしで合格。
 母親にとって聡は自慢の息子だった。
 彼の人生は約束されていたはずだった。


 
 しかし。
 聡は神童と呼ばれていた頃からすでに化け物の影をちらつかせてた。
 最初の問題が発覚したのは、当時住んでいたマンションだった。



「おたくの息子さん、エレベーターの中で乗り合わせた女の子を、どうも叩いたみたいなんです。昨日そちらの奥さんから苦情があって、それが本当なのかお話を伺いに寄らせてもらったわけなんですけどね」



 母親は、心底驚いたに違いない。
 聡のおかげで母親は周りに褒められることはあっても、困らせられたことなど、一度もなかったなかったのだから。


 だから管理人からの疑いを、こう跳ね返したのだ。



「私の息子に限って、そんなことするはずがありません!」



 だが残念なことに、聡の問題行動は徐々にエスカレートしていった。





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