この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
化け物
第1章 化け物
「さとし」
戸口から、名前を呼ぶ。
力なく椅子に座っている聡が、ゆっくり顔を上げた。
周りを見渡している彼の名前を、もう一度呼ぶ。
やっと聡はわたしのほうを見た。
虚ろな眼差しがわたしの姿を捉え…。
そしてすぐ、驚いたように見開いた。
突然聡が立ち上がった。
椅子が倒れる。
驚いた拍子に父親が尻もちをついた。
母親は俯いたまま振り向きもしない。
聡がわたしの名前を呼んでる。
ボサボサ頭の、入院中誰も剃ってくれなかったせいか、無精髭が伸びてる聡。
いつの間にかわたしよりうんと背が伸びて、体格が良くなった聡。
わたしの知らない男の人みたいになってしまった聡。
わたしを力強く抱き締めて、子供みたいに声を上げて泣く聡。
化け物になってしまった、わたしの双子の弟。
「なに泣いてんの。聡にはお姉ちゃんが…わたしがいるでしょ?」
可哀相な聡。
わたしの命の片割れ。
わたしの心臓。
戸口から、名前を呼ぶ。
力なく椅子に座っている聡が、ゆっくり顔を上げた。
周りを見渡している彼の名前を、もう一度呼ぶ。
やっと聡はわたしのほうを見た。
虚ろな眼差しがわたしの姿を捉え…。
そしてすぐ、驚いたように見開いた。
突然聡が立ち上がった。
椅子が倒れる。
驚いた拍子に父親が尻もちをついた。
母親は俯いたまま振り向きもしない。
聡がわたしの名前を呼んでる。
ボサボサ頭の、入院中誰も剃ってくれなかったせいか、無精髭が伸びてる聡。
いつの間にかわたしよりうんと背が伸びて、体格が良くなった聡。
わたしの知らない男の人みたいになってしまった聡。
わたしを力強く抱き締めて、子供みたいに声を上げて泣く聡。
化け物になってしまった、わたしの双子の弟。
「なに泣いてんの。聡にはお姉ちゃんが…わたしがいるでしょ?」
可哀相な聡。
わたしの命の片割れ。
わたしの心臓。