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第1章 化け物

　事件後。
　母親は聡を更生させようと必死で努力したけれど、時既に遅し。
　


　転校先の公立中学校で聡がしでかしたことは、示談なんかでは到底済まされることではなかった。



「おたくの息子さんが、3年生の女子生徒をナイフで刺したと、中学校から通報がありました。
　お母さん、今すぐ来て下さい」



　電話は警察からだった。
　しかし母親が警察に出向くことはなかった。
　なぜなら、ショックのあまり電話口で倒れてしまったからだ。


　被害に遭った女子生徒は、胸と腹、顔面と…眼球を激しく損傷する重傷を負った。


「殺せなかった。また失敗しちゃった」


　取り調べに対し聡は、反省する素振りは全く見せなかった。


　その事件により、聡は少年院に収監された。
　事件は新聞やニュースでも報道され、聡のことを神童だと持て囃していた人たちは掌返しに一同、聡のことを化け物だと言った。


　家族は遠い土地への引っ越しを余儀なくされた。