この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
† 姫と剣 †
第1章 お忍び
静寂に包まれたその場で、リューイだけが地面に転がり落ちていた包みを掴んで、ルシアと少年の方へと振り返った。
明るい茶色がかった瞳に、亜麻色の髪が少しだけかかる。
先ほどまで鋭かった眼光に、少し優しい光が灯るとリューイは少年のところまで歩み寄って、その包みを渡した。
「ちゃんと家まで持って帰れよ」
「ありがとうっ……リューイっ…」
その包みをぎゅっと抱きしめた少年の頭をリューイは優しく撫でる。
その様子をルシアは隣で呆然と見ていると、リューイが顔を向けた。
ルシアの深緑の瞳と、リューイの明るい茶色の瞳。
視線が絡まり、一瞬だけ時が止まるのを互いに感じる。
「…あ、の………」
先にルシアが声を発したのも束の間、周りから、わーーー!!!!と歓声が上がって、リューイとルシアのところへ人々が駆け出した。
片眉を上げたリューイは、反射的にルシアの手首を掴む。
「まずい、こいつらに捕まる」
「えっ……」
「俺は面倒事は嫌いなんだ」
それだけ言ったリューイは人の合間を巧みに縫って人だかりから脱する。
リューーイーー!!!という黄色い声援の中を見事に交わしながら、ルシアは懸命に足を走らせる。
小道にスッと入り込んだリューイはそのまま、林の中へと駆けると、誰もいない丘まで出て、ルシアの手首を離した。