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† 姫と剣 †
第1章 お忍び
ルシアが庇っていた少年が、目の前に立つ男の背中を見て目を輝かせる。
「リューイっ……!」
背中には弓と、大きな剣、そして、左手には盾を持っている。
おそらく、左手の盾でグレンの拳を弾いたのだろう。
ゴクリと唾を飲んだルシアはゆっくりと立ち上がる。
少年がリューイと呼んだ男は、背は高い。
だが、グレンのような大柄なタイプではない。
この男があの大男の拳を弾いたのだろうか……
ルシアは自身の推測に疑心暗鬼になっていると、グレンが地面からリューイを見上げてバツの悪そうな顔をした。
「リューイ……帰ってたのか」
「何をしている、と聞いている」
「お、おい、誤解だ……っ…お前の留守中にこの街の治安を守ろうと──うっ」
ペラペラ話しながら焦った様子を見せるグレンの胸ぐらを片手で掴んだリューイは、そのまま大男を上へと持ち上げる。
鋭い眼光でグレンをきつく見つめると、グレンは苦しそうに顔を歪ませた。
「お前の行動は目に余る」
「リュ、リューイ…っ……ぐるじ…」
「今すぐこの街を出て行け」
「……っ…………」
「聞こえたか」
グレンは抵抗しようとするが、表情の変わらないリューイにグレンはさらに顔を歪ませる。
「わ、わかった……」
その声と共に、リューイが腕を離すと、再びグレンが地面に崩れ落ちた。
「何をしてる、早く行け」
咳き込んだグレンは、リューイの言葉に慄きながらふらふらと立ち上がると、そそくさとその場から立ち去っていった。