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† 姫と剣 †
第1章 お忍び


「ちょっ…はぁっ……」



胸に手を当てて、ルシアは荒くなってしまった息を整える。



「ここまで来れば追ってこないだろう」


「はぁっ……な、んで、にげっ…」



うまく声が発せないルシアとは裏腹に、リューイは、深くふぅーとだけ息を吐いている。



「ちょっと……っ……聞いて…っ…るの? なんで逃げたりなんかっ……」


「あんな事で英雄扱いされても、めんどくさいだろ。あれに捕まってたら、何時間もあそこから離れられなくなる」



はぁ、と言いながら、背中に背負っている弓と剣と盾を下ろすと、リューイは草の上に腰掛けて、そのまま天を仰ぐように寝転んだ。


ルシアは苦しさのあまり、口元を覆っていた布を解いた。



「それにしても……お前は身の程を弁えた方がいい」


「え……?」


「俺が来なかったらどうするつもりだったんだ」



リューイは、そう言いながら、起き上がるとルシアのことをじっと見つめた。


先ほど布で見えていなかった金色の髪が微かに見えている。


そして、力強いその目力に、先ほど目線を合わせた時と同じような感覚に陥り、思わず視線を外した。



「別に、私……弱くないわよ?まぁ…さっきは、ちょっと迷いが生じちゃったから……」



そう言いながら、ルシアもリューイの隣へと進み、腰を落とす。



「ありがとう、助かったわ。あなた、強いのね」


「………………」



返答のないリューイに、ふふとルシアは笑った。



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