この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
† 姫と剣 †
第5章 来賓
微かに震えるルシアは、ロイを強く見つめ返す。
「では…何故…」
「あなたが欲しいからです」
「っ……………」
至極真剣なロイの言葉がルシアの体を駆け巡る。
捉え所のない人物からの本気の眼差し。
その言葉に偽りがない事は見ていれば分かる。
「何不自由させません」
「……………」
「あなたが望むものは何でも手に入れましょう。あなたのためなら祖国アノアを捨て…私がローハーグに来たっていい。もちろん愛人もいらない。生涯、あなただけを愛します」
「ロイ王子………」
青い瞳に、鋭さが緩んで切なさが宿る。
プライドもなにもない。
いつも余裕があり、飄々としているロイはあるがままを見せる。
「あなたと共に生きたい。それだけ、です」
真っ直ぐな気持ちにルシアは胸に当てて目を瞑る。
きっと、こんな事を言ってもらえるのは幸せな事なんだろう。
あんな事をされてもなお、やはり悪い人でないという事が分かる。
それでも……
ルシアはロイに剣を突きつけているリューイの背中を切なく見つめる。
「何をふざけたことを。そうしたいのなら、姫を攫ったりせず最初から───」
「───君の言う通りだ。でも、あの時はどうしようもないほど気持ちが昂って体が勝手に動いていた。君にもそういう経験、ないか?」
ロイはリューイを弄ぶようにして尋ねる。
案の定、リューイは言葉を返せなくなり、そのままロイから視線を外した。