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† 姫と剣 †
第5章 来賓

「私は……意見をいう立場ではありませんので」
「それでも……あなたの意見が聞きたいから聞いているのよ」
謁見の間の扉が近付く。
リューイから欲しい言葉はもらえぬまま。
もちろん、そんなものもらえたとて、どうにもならない。
「姫がどのようなご決断をされても、私が姫を守ることに変わりはありません」
質問をかわされた。
リューイの言葉にそう思いながら、ルシアは緩く微笑む。
「あなたはそればかりね」
皮肉混じりのルシアの言葉と共に扉が開かれると、ルシアは背筋を意識して伸ばして凛と立つ。
扉の軋む音を聞いた部屋の中のものたちは一斉にルシアに視線を向けた。
「ルシア……来たか」
父であるローハーグ王の言葉に、ルシアはゆっくりと頭を下げる。
「お待たせしてしまい申し訳ございません」
顔を上げると、先に着いていたロイと目が合った。
そしてその隣の人物に目を移す。
「おぉ……こちらがルシア姫……。なんとまぁお美しい」
ローハーグ王に負けず劣らずの恰幅の良さとヒゲ。
優しい瞳でルシアのことを眺め、微笑んでいる。
白髪混じりの黒い髪はうねりながら肩まで伸びる。
その男の姿を見て、ルシアは所々にロイの要素を感じていた。
聞かずとも、目の前のこの男が、ロイの父であるアノア国王であることが分かった。
「ロイ、お前が私に慣れぬ頼み事をしてきた理由がよく分かった」
父の茶化しに、ロイは片眉を上げてフンと息を吐いていた。

