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† 姫と剣 †
第5章 来賓
息子のそんな様子に豪快に笑ったアノア国王は、改めてルシアに頭を下げる。
その様子にルシアも慌てて頭を下げた。
「私はこのロイの父で、アノアの国王ハミル=タール=アノア、と申します」
「ルシア…ルシア=ウェルズ=ローハーグ、と申します」
合わせて頭を下げたルシアに、アノア国王がニコリと笑う。
飄々としたロイとはまた違う、陽気な雰囲気に少し意外だと思いながら、ルシアも釣られて微笑む。
「先日のルシア姫の儀にて息子がお邪魔させていただいた際、息子はすっかりルシア姫の美しさに心奪われてしまったようでして…」
チラとロイを見た王は、フッと笑う。
「まぁ、あまりに呆けてしまったせいか、帰りの道中で盗賊に襲われるようなヘマをやらかしたようですが」
その言葉に、ルシアは思わず斜め後ろに佇むリューイを見る。
あの日のロイの事件はリューイやマヤなどの数人しか真実を知らない。
もちろん、ルシアは父にも報告していないし、ロイも自分のしたことを父に言っていないのだろう。
言ってしまったら、リューイの言った通り戦争になりかねない。
それは避けるべく無理で適当な言い訳をして、互いに丘の向こうの盗賊のせいにすることでこの場が保っているのだ。
「……と、まぁそんな情けないお話は良くて…ですね。本日は烏滸がましいことも承知で、婚姻の許可を頂きに参りました」
はぁ、と返事をしたルシアは父であるローハーグ王を見上げた。