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† 姫と剣 †
第5章 来賓
「ローハーグ王はルシア姫のお気持ちに従うとおっしゃってくださいまして」
ルシアの気持ちを察したようにアノア国王が言葉を添える。
その言葉にルシアは、俯いてじっと黙った。
何が正しいのかを考えて、想いを巡らせる。
ロイとは結婚を決められるほど話せてもいない。
それに、薬を盛ったり連れ去ろうとしたりと強引で気が抜けない。
ただ、アノアは実りの国。
同盟が良い条件なのも確かで、それはローハーグのためにもなる。
「ルシア」
思い詰めるルシアに、ローハーグ王が思わず声を掛ける。
顔を上げたルシアは、アノア国王を見て緩く笑う。
「ロイ王子は……とても素敵な方だと思います」
「おぉ、それでは!」
喜ぶアノア国王とは裏腹に、その先に言葉を続けようとするルシアを見て、ロイはゴクリと唾を飲む。
「ただ……まだあまりロイ王子の事を存じ上げないので…。王子も、もっと深く私のことを知ったら、思っていたのとは違うってこともあると思いますし…」
やんわりと断る雰囲気を纏うルシアに、アノア国王が迫る。
「そういう事でしたら、ぜひアノアにいらっしゃいませ!!」
突然の提案に、ルシアは、へ?と声を上げる。
「祖国でありのままのロイと心ゆくまでお過ごしください。それで、ロイが姫に合わないと感じられるようなら、その時は盛大に振ってくださって結構ですから」
「い、いえ……あ、あの」
ハハハハと豪快に笑うアノア国王に気圧されていると、そこにロイが割って入ってルシアの手を握った。