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† 姫と剣 †
第5章 来賓
「まだ私のことを知らないとおっしゃるなら…ぜひ知っていただきたい」
「王子…」
「父の言う通り、ぜひアノアへ」
真剣なその表情に、どうにも引き返せないところまで来てしまっている。
知らないから、ということを言い訳にしてしまった以上、この申し出を断る術がない。
「良い機会ではないか、ルシア」
「……ご迷惑でないの…なら」
「何をおっしゃいますか。こちらがお誘いしているのに」
にこりと笑ったアノア国王は、ローハーグ王に向き直る。
「必ず無事に返しますゆえ」
「うむ」と返事をしたローハーグ王は、ルシアの後ろに佇むリューイに目をやる。
その視線にリューイが気が付くと、ローハーグ王はコクリと深く頷く。
「────…」
言葉は発されぬとも『頼んだぞ』と言っているのが分かる。
リューイは当然、それを承った意を表するように深く頷き返した。
「では早速我が国へ向かいましょう」
そう言って腕を組んだアノア王は、わざとらしく、あ〜〜と声をあげた。
「どうかされましたか」
あまりのわざとらしさに、ロイも呆れた様子で尋ねる。
「いや〜行こうにもルシア姫の用意がありますしなぁ。ただ、私は今すぐに帰らないと、公務が詰まっておるからな」
「はぁ」と気の抜けた返事をするロイとは違ってルシアが慌てて会話に入る。
「あ、あの私急いで準備いたしますので──」
「──いやいや、それは申し訳ありませんから、私は先に失礼させていただきます。姫は支度ができてから、ロイと一緒に『ゆっくり』アノアへいらっしゃいませ」