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† 姫と剣 †
第6章 アノア王国
「バカバカしい。女を巡って兄弟で殺し合うなど…」
「別に俺はロイを殺す気、無いよ?」
「ウィル、お前はもう黙れ」
イーサの言葉にウィルはわざとらしく唇を尖らせる。
ようやく場が静まるとイーサはロイに向き直る。
「失礼のないよう、丁重にもてなせ」
「そのつもり…ですがね」
再びウィルをキツく睨む。
阻む相手がいなければ叶うこと、なのだ。
当の本人は、イーサに黙れと言われたのも束の間、「それにしても…」と言葉を発する。
「すごい形相だったね、ルシア姫の側にいた男」
「………確かにそれは、俺も感じ取っていた」
ルシア姫の側にいた男……
もちろん、それがリューイのことであることはロイは分かっている。
「かなり、腕が立つと見た」
イーサの言葉にロイは片眉を上げる。
「イーサお兄様ともなると、見ただけで分かるのですか」
もちろん、言うまでもなくリューイは強い。
「分かるさ」と返事をするイーサの隣でウィルが伸びをするようにる天井に腕伸ばした。
イーサとロイの青い瞳に比べると、ウィルだけは瞳の色素が薄く水色に近い。
普段のらりくらりとしているにも関わらず、この瞳に捉えられると弟のロイですら少し息苦しさを感じる。
威圧があるわけではないのに、自由を奪われるような感覚が巡るのだ。
「俺なんかより、奴の方がよっぽど厄介なんじゃない?」
ロイはウィルから視線を逸らす。
それは、言われなくても分かっていること、だ。
「少し休みます」
髪をかき上げたロイは2人の兄の間を割って、足を進めていた。