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† 姫と剣 †
第6章 アノア王国


少し気の抜けていたルシアは、また姿勢を正してロイの元へと向かう。


すると、ロイは、いつになく疲れた様子ではぁとため息を吐き、ルシアの手を握った。




「ロイ…王子……?」


「先程は…兄が大変失礼いたしました」


「………いえ、あの…お会いできて私も嬉しかったですし…」




少々困惑したが、その言葉に偽りはない。


さっきの一件でひどくやつれた様子のロイを見上げると、ロイは下唇を噛みながらルシアの頬に手を添えた。





「兄には……特にウィルにはお気を付けください」


「え………?」


「ウィルは昔から私の欲しがるものを───」



深刻な表情を見せるロイにルシアは思わずプッと吹き出して笑う。


その姿にロイは片眉を上げてルシアの両肩を掴んだ。




「姫っ……笑い事ではなくてですね」



「ごめんなさいっ……でも、シャロンも…昔から私の欲しがるものを欲しがっていたので…」



「シャロン姫は…妹ではありませんか…。ウィルはあんなでも一応兄なのですよ!」




余計にムキになるロイの姿に、少し人間らしさを垣間見る。


掴みどころがないと思っていたが、やはり1人の人間。


もちろん、もっと掴みどころの無いウィルに会ったから余計にそう見えるのかもしれないが。





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