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† 姫と剣 †
第6章 アノア王国


「素敵なご兄弟じゃないですか」



ルシアの呑気な感想に、ロイはより一層深くため息をついた。




「とにかく、御用心ください」


「……分かりました」




ややいなす様にルシアが返事をすると、ロイはルシアから手を離した。




「明日から、アノアの国の中をご案内いたします」



「本当ですか…?」




「えぇ」と返事をしたロイにルシアは満面の笑みを見せる。


屈託のないその表情にロイの胸が素直に震える。




「楽しみにしていますね」



「私もです。では」





ゆっくりと扉が閉められると、ロイは肩にかかった髪を右手で靡かせ、チラとリューイを見た。




「こちらの護衛も増やすが……ウィルが現れても姫に近付けるな」


「…………俺はルシア姫に仕えている。お前の指図は受けない」




リューイはそう言って両腕を組む。



チッと舌を打ったロイに、「ただ…」とリューイが言葉を続ける。





「言われずとも、姫を守るのは俺の仕事だ」


「…………仕掛け人形のようにそればかり、だなお前は」




目を細めたリューイは、「はっ」とわざとらしく笑う。




「馬鹿にしてる暇があれば、自分の兄貴くらい自分で見張ったらどうなんだ」



「………出来たらしてるさ」



「………ろくでなしは血筋の様だな」




冷淡に吐かれたリューイの言葉に、ロイは拳を握ると、何も言葉を返すことなくその場から離れた。





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