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† 姫と剣 †
第6章 アノア王国
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翌日、朝。
窓を伝う水滴を目で追いながら、ルシアとマヤは2人で合わせてため息を吐いた。
アノア王国に着いて、ようやく初めての観光ができる日だというのに、あいにくの雨。
「ついていないですねぇ……」
「本当………」
ムッと口を噤んだ途端にノックの音が響く。
それはきっと王子であることはすぐに予想できた。
「開けますね」
アマンダの問いに、コクリと頷いて窓から離れたルシアは扉の近くへと向かう。
開かれた扉。
案の定、ロイが姿を現わすとロイは「おはようございます」と笑顔を向けた。
「おはようございます」
「……? 浮かない顔ですね。眠れませんでしたか…?」
「いえ……そうではなく…」
この雨でも笑顔を見せるロイの方が不思議で、ルシアは再び窓の方に顔を向ける。
それに気付いたロイは、「あぁ」と声を上げた。
「雨、ですか?」
「えぇ、せっかく観光に行こうと思っていたのに」
浮かない顔を見せるルシアが、少し子どもらしく見えて、ロイは余計に笑顔を見せる。
いちいちの仕草や表情に胸が躍って気持ちが昂る。
「大丈夫です。晴れるまで宮殿の中を案内します」
「……中を?」
「ええ、例えば……図書館とか」
パァと表情が明るくなったルシアの手をロイは掴むと、そのまま部屋を出て宮殿の図書館に向かっていた。