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† 姫と剣 †
第6章 アノア王国
積み上げられて出来た本の塔に囲まれながら、ソファーに腰掛けるルシアは、無我夢中で本を開いて目を輝かせている。
ローハーグの王宮内の図書館ほどではないが、このアノアの図書館も広く立派な作りになっている。
蔵書数はローハーグの方があるが、何より建物が美しい。
入って正面から見た時、左右対称に伸びる螺旋階段に、カラフルなステンドグラスの窓。
中央は広々としており、開放的な空間が広がる。
ひとしきり気になる本を掴んだルシアは、脇に置かれた広いソファーに座り、それに目を通しているのである。
「あれ…これ、読んだことがあるけど……ローハーグにあったものとは違うわ」
「そう…なのですか?」
ルシアの脇に腰掛けたロイはルシアにぴったりと寄り添ってルシア背もたれに腕を回すと、その本を覗き込む。
「これは…アノア出身の者が書いた本、ですね。有名ですよ、アノアで生まれ育てば知らない者はいないと……」
「あ、もしかして!」
ペラペラとページをめくりながら、随所を手早く読むルシアは「やっぱり!」と声を上げてロイを見上げた。
「これが原版なんです!」
「と……いうと…?」
「私が読んだ本は、ローハーグの言葉に少し直してあるもので」
「とは言っても、ローハーグもアノアも使用する言語は変わりませんよね? 少し言い回しが異なる時はあるかと思いますけど」