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† 姫と剣 †
第6章 アノア王国
先程の雨が嘘の様に、晴れ渡る空を仰ぐ。
「むしろ、こっちの方が綺麗かも」
まだ水滴の残る草木に、太陽光が反射してキラキラと光る。
ロイに連れられるまま山奥へ来たのだがルシアは、めいいっぱい体に空気を吸い込んだ。
「いい気持ちー」
生い茂る緑。
光り輝く水滴。
ルシアの金色の髪も同じく光り輝く。
その姿に、ロイもリューイも目を奪われながら、自身もその爽やかな空気を感じ取る。
「女神……さながら、だ」
ロイの言葉の囁きにリューイは視線を投げる。
「我が国の実りの神ティーファ……。ルシア姫はその化身、なのかもしれない」
ロイの言う通り、今のルシアの姿は神々しく、人を超えて美しい。
だが─────
「ルシア姫はローハーグの姫、だ。アノアの神の化身の訳がないだろう」
リューイの指摘に肩を落としたロイは、片手を振ってため息をつく。
「これだから騎士は情緒がなくて嫌なんだ」
ルシアの方へと歩みを進めたロイは、そのままさらに奥へのルシアを誘う。
「あの、ロイ王子……どこへ…?」
「もう着きますよ」
少し濡れた葉をかき分ける。
その先に見えるものの予想が付かずに胸を高鳴らすルシアの目の前に、沢山の実が成る木が姿を表した。