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† 姫と剣 †
第6章 アノア王国
「さぁ、姫、着きましたよ」
得意げに微笑むロイに、ルシアはハッと息を飲む。
「あれは……もしかして……」
「えぇ」とロイが返事をしたのも束の間、カサカサと草の音に、リューイが機敏に反応する。
そして、すぐに目を見開いたロイは、「うぉっとっ…」と声を上げて体をよろめかせた。
「王子!?」
突然背後から両肩に掛かった重みにロイはしゃがみ込む。
そして、ふふふふと聞き覚えのある笑い声を耳にして、「おい!」と声を荒げた。
不思議に思って、ロイの背後をルシアとリューイが覗き込む。
すると、ひょこっと顔を出した少女2人にルシアは驚きのあまりのけぞった。
「あら?」
「この方が」
「「ルシア姫?」」
綺麗に声を揃えた2人はよく見ると見た目までそっくりだ。
ルシアの妹シャロンよりも小さいのでおそらく10にも満たない。
どちらも腰近くまで伸びた長い黒髪に、茶色い瞳。
くりくりとした大きな目はこぼれ落ちそうなほどだ。
「あの……あなたたちは───」
「エマ! リタ! いきなり飛びかかってくるな!」
立ち上がったロイは、2人の頭に手を乗せて、声を荒げる。
だが、2人の少女…エマとリタは萎縮するどころか、ロイを見上げてニコニコと微笑んでいた。
「ロイお兄様! やっと私たちと遊んでくれる気になったのね!」
「もう! ずっと待っていたんだから!」
お兄様、という言葉に、ルシアは1人で納得していた。
ローハーグにて、庭を散歩した時、ルシアはロイに兄弟の数を聞いたことがあった。
──────────────── 兄が2人、と妹が2人、の5人ですね
ロイは確かにそう言っていた。