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† 姫と剣 †
第1章 お忍び
「あの……またここに来ればあなたと会えるかしら」
「………さぁ」
弓やら剣やらを装備しているリューイはそっけない。
「なんだか……あなたといると、心地いいの。だからまた会えると……嬉しい、って思って」
見つめ合う2人に、また不思議な空間が生まれる。
風がそよいで2人を囲う。
まるで『昔もそうだった』かのように─────
「自分の好きな時に、行きたいところへ行けばいい。簡単な話だ」
自由の効かない姫という立場のルシアに放たれた皮肉な言葉。
それに、ルシアはそうね、と返事をする。
「じゃあまた。今日は本当にありがとう」
ルシア再び布で口元を隠すと、そのまま来た道を軽快に戻っていった。
ルシアは不思議な気持ちで溢れていた。
リューイはペラペラと話すタイプではなかったが、なぜか纏う雰囲気が心地よいのだ。
また来よう。
明日も来れるだろうか?
今日借りた本だって返さなければならないし。
言い訳がましくそんなことを思いながら、街まで降り立ったルシアは軽々とした身のこなしで辺りを見回す。
集中して、そして見慣れている動きをするものに目を止める。
「マヤ」
トントンと背中を叩かれたマヤは、その知った声音に涙を流しながら振り返る。
「ルシアさまっ……よかったっ……ご無事で……っ!」
「ごめんね?」
「ごめんね?じゃないですよ!私本当心配でっ……もしルシアさまに何かあったらって私っ…」
オロオロとしてるマヤに、ニコリとルシアは笑みを返す。
「だーいじょうぶ! 本当今日は素敵な1日だった!」
「もう!そんな呑気なこと言ってっ…!」
「さぁ、早く帰りましょう? 早くその本読みたくてうずうずしているの」
そう言いながら、ルシアは涙目のマヤを連れて、王宮に帰っていった。