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† 姫と剣 †
第6章 アノア王国
まるでマンゴーのような見た目。
魅惑の甘い香りが漂うその果実は────
「これが……サワン…」
「ええ、そうです」
成人の儀の後の祝賀会でロイと初めて会った時に聞いた話をルシアは思い出す。
手前の赤く色付いた実をもいだロイは、着ているマントで果実の表面を少しさすると、そのままそれをルシアに差し出した。
「すごい……綺麗な形」
「皮のまま、食べられますよ、どうですか?」
「このまま……ですか?」
コクリと頷きながら、ロイは少し心配そうにルシアを見る。
一国の姫は果実を丸かじりなんてしない…だろうか。
持ち帰って、しっかり処理させてから……
「嬉しい! いただきます!」
「────────…」
ロイの心配をよそに、大きな口を開けて、果実を頬張るルシアは、その口いっぱいに広がる甘さに目を見開く。
書物に書いてあった通り。
だが、百聞は一見にしかず。
「おいしいっ………」
実際に食さなければ分からない風味に、興奮しているとロイは笑ってルシアの口元に滴る果汁を指で拭った。
「あ、ごめんなさい。私ったらはしたない……っ」
今更反省するルシアに艶いた視線を送りながら、ロイは果汁を拭った指をぺろりと舐める。
「気に入っていただけて、何よりです────」
「…っ………─────」
「ここに成っている実はどれでも、いくらでもどうぞ」
居た堪れなくなって視線を逸らしたルシア。
そしてその視線の先に、エマとリタに取り囲まれ困惑しているリューイがいて、ルシアはキョトンとしながらその3人を見た。