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† 姫と剣 †
第6章 アノア王国
「あなたはもう少し表情を豊かにした方がいいと思うわ」
「そうよ。せっかく素敵なのに」
「い、いや……あの…っ」
幼い少女とは思えない指摘に、リューイは慌てながら頭を掻いている。
いつも表情を変えないリューイの狼狽える姿は珍しい。
声を殺してくくくと笑ったルシアは、すぐそばに成っている黄色い実を見つけて触れた。
「ロイ王子、この実も……いただいていいです?」
「………構いません…が…その実は───」
口の前で人差し指を立てたルシアは、にやりと笑うと、そのままその実をもいで、リューイの元に近付いた。
「姫っ……」
ようやくの助け舟に、リューイは少し安堵した様にルシアを呼ぶ。
ルシアは微笑みながら手に持つ果実をリューイに差し出した。
「あなたもいただいたら? すっごく甘くて美味しいの。皮ごと食べられるのよ」
「………いや、私は…」
「せっかくだし。サワンは…このアノアでしか成らない果実なのよ」
グッと再び差し出されたサワン。
観念したリューイは、それを受け取ると、しばらくその実を眺めたあと、その実を頬張る。
そばにいたエマとリタはその様子を見てクスクスと笑う。
アノアにしか成らないサワン。
見た目はマンゴーに似ていて、完熟すると実は紅く味はとても甘い。
だが、成熟する前の実は黄色く、そして─────
「んっ……⁉︎⁉︎」
目を見開いたリューイは、顔を顰めながら、目をギュッと瞑る。
そう、成熟する前のサワンは調味料に使用されるほど、酸味が強いのだ。