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† 姫と剣 †
第6章 アノア王国
慌てて飲み込んだリューイが涙目になるのを見て、ルシアだけでなくエマとリタがお腹を抱えて笑う。
「っ……姫…」
「ごめんなさいっ……ちょっと意地悪したくて…っ」
まだ収まらないとばかりに笑うルシアをリューイは口元を拭いながら不服そうに眺める。
ルシアは笑いで出た涙を拭いながら、「やっぱりそんなに酸っぱいのね?」と言って、リューイの手から食べかけのその黄色いサワンを受け取った。
そして、少しだけ端の方をかじったルシアは、そのあまりの酸味に、先程のリューイと同じく顔を顰めて口を窄める。
「ほんとっ……すごい……っ」
仕掛けておいて、自分までそれを食しているルシアを怪訝に眺めていたリューイだったが、その酸っぱそうな表情に思わず、ふっと笑った。
「あ、ほら! そうやって色んな表情している方が素敵!」
「ね! もっと今みたいに笑ったら?」
エマとリタのまた茶々を入れられて、リューイは再び戸惑いを見せる。
そんなルシアとリューイ2人の和やかなやりとりの一部始終を見て、ロイは、フッと笑いながら切なげに天を仰いで空気を胸いっぱいに吸い込んだ。