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† 姫と剣 †
第6章 アノア王国
宮殿へ戻ってきた時には、もうすっかり夜になっていた。
部屋の前で、ロイから聞いた話にルシアは「え⁉︎」と声を上げている。
「ほ、本当に、この宮殿の中に、そのような場所が?」
「ええ。さすがのルシア姫もご存知なかったですか?」
ルシアは素直に首を横に振る。
温かいお湯が、天然で湧き出る場所がある、というのは、もちろん物知りなルシアも聞いたことがあった。
でも、まさかそれがこのアノアの宮殿の中にあるとは………
「用意させましたので、どうぞごゆっくりお入りください」
「いいんですか……?」
「もちろん。疲れが癒えますよ」
微笑んだロイは、そのままルシアに近く迫る。
「何なら、ご一緒します……?」
「っ……な、何をおっしゃいますかっ…」
顔を紅くするルシアから少し視線をずらせば、目を細めて睨みを飛ばすリューイがいる。
両手を上げたロイは「冗談です」と言って一歩後ろへと下がる。
どこまでが冗談なのか、分かりづらい。
このアノアでの滞在で、やはり悪い人でないことは分かってきたものの常に腹の裏が気になってしまうのがルシアの正直な気持ちだ。
「では、また明日」
音を立てて、手の甲にキスを落としたロイは、華麗にその長い髪を靡かせながら去っていく。
ふぅ、と息を吐いたルシアは、一度部屋に入って用意を進めるとアノアの使いの人に連れられて、湯あみへと向かっていた。