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† 姫と剣 †
第6章 アノア王国


ふと、湯から片足を浮かせた。



リューイと同じ色のミサンガ──…



まだこのミサンガが意味することをリューイに聞けていない。



なぜか聞こうとしても、いつもはぐらかされてしまう。



隠したい何かがあるのとみて間違いはないんだろう。



でもそれを明らかにしようとしないリューイの態度にルシアのモヤモヤは募る。



ロイとの結婚をどうするにしても、それはどうしても聞いておきたいことだ。



足を湯に入れたルシアは、考え事をしながらしばらく湯に浸かる。


そして少し暑くなってきた頃、くるりと振り返ってマヤとアマンダを見た。




「ルシア様、もう上がられます?」



大きな布を広げながら立ったマヤに「ええ」と返事をしたルシアは、湯から上がった。



そして、布を羽織り体についた水滴を拭いていると背後からの気配に、体を強張らせた。




「どうも、ルシア姫」




突然の男の声に、マヤもアマンダもきゃーー!と悲鳴を上げて腰を抜かしている。




「あなたはっ……」



振り返った先の男を見つめながら、ルシアが体を隠すように布を巻きつけて後ずさる。




「ゆっくりできた…かな?」



軽薄な態度。


スラリとした長身。


そして短い黒髪から覗く、まるでガラス玉のような瞳──…




「ウィル様っ……!」



この湯浴み処に案内した使いの女も驚いた様子を見せている。



ふっと笑ったロイの兄であるウィルは、そんな使いの女には気にも留めずに、完全に無防備なルシアに近付くと、腰を掴んでルシアの顔を覗き込んだ。

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