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† 姫と剣 †
第6章 アノア王国
「落ち着いて、剣士さん」
ジリジリと近付いてくるリューイに、ウィルは両手をひらひらさせる。
この状況でまだ戯けたような態度を見せるウィルにリューイは躊躇いなく剣を向けて睨みを飛ばした。
「どういうつもりだ」
「姫と話したかっただけだよ」
「ふざけるな」
「ホントホント」と言いながら笑ったウィルは、背後のルシアにまた視線を送る。
「だけど、話しているうちに、姫があまりに魅惑的だったから…。すんごいいい体なんだもん。ほら、君も男だったら分かるでしょ?」
ウィルの言葉にリューイがカッと目を見開く。
「リューイっ……待って」
ただならぬ雰囲気を纏うリューイの名をルシアが呼ぶ。
このままでは、ウィルを斬りかねない。
他国の地でその国の王子に傷を負わすなど、あってはならない事だ。
リューイもそれは分かっている。
しかし、この事態をどう収束させるべきか……
怒りで頭がうまく回らない────
そんな最中、またドタドタと足音が鳴り響いて、勢いよく小屋の中に人が入ってきた。
「ルシア姫っ………」
息を切らして現れたロイの黒髪が靡く。
布に包まりながら、床にへたれ込むルシアと、ヘラヘラとしている兄にリューイが剣を突きつけている。
その様子からすぐに状況を察したロイはギリと奥歯を噛むと、リューイをよそにウィルに近寄ってその胸ぐらを掴んだ。
「おっとっと…」
「────何をした」
勢いよく壁に背中を打ち付けられて、ウィルの額に汗が流れた。