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† 姫と剣 †
第1章 お忍び
「いつもここにいるけど、お仕事はいいの……?」
「暇人みたいな言い方だな」
「そういうつもりはない……けど」
風が吹いて、ルシアの頭に巻いている布が捲れる。
そして、現れた輝かしい金色の髪が靡いた。
「今、休暇中なんだ」
「そうだったのね」
シン……と静まり返ると、リューイが体を起こして少し落ち込んでいる様子のルシアを見つめた。
「どうかしたか」
「いや、あの……。貴重なお休みなのに、ここ最近毎日邪魔しちゃって……なんだか申し訳無くなってきちゃった」
ゆっくりとリューイの方を見ると、自分の方に手を伸ばしているのが分かった。
再び時が止まったかのような空間。
じっとその茶色い瞳に囚われて身動きが取れない。
そして、リューイの手が、ルシアの頬を────通り越して、先程風でめくれた布を掴んだ。
「………りゅ、リューイっ…?」
ルシアの布を掴んだリューイは、そのままそれをルシアの頭に被せる。
「ちょ、ちょっと……っ」
「雨だ────」
そうリューイが呟いたのと、ルシアの手の甲に雨粒が落ちたのが同時だった。
「雨……?」
「強くなりそうだ」
スッと立ち上がったリューイは目を細めて雨雲を見つめた後、まだ座っているルシアに手を差し出した。
「行くぞ」
どこへ…?と聞くよりも前に、ルシアはリューイの手を握った。
そして軽々しく身体を上げられると、そのままの状態で引っ張られた。
「ちょっ…リューイっ…!?」
ゴロゴロと空が唸って、激しい雷の音が響くと、ルシアが悲鳴を上げた。