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† 姫と剣 †
第7章 決意
「昔のことは思い出せない。でも…あなたといると心地よくて、『姫』というしがらみも忘れられて…」
つらつらと話しながら、ルシア自身も胸がいっぱいになっていた。
苦しかったのも事実。
でも、幸せを感じたのも事実だ。
「色んな感情に溢れて…。あなたがいるのといないのとでは、まるで見える世界が違う」
でも…と言葉を続けたルシアは、リューイから体を離す。
「私はやっぱり『姫』だものね」
ノブから手を離したリューイは再び振り返ってルシアを見る。
まるでひだまりを思わせるような、優しい笑顔。
その笑顔の裏に悲しさが見えても、リューイにはどうすることもできない。
「ごちゃごちゃ言ってごめんなさい」
返す言葉に困っていると、ルシアはそれを察して「いいの」と言った。
「何も言わなくて…、いやむしろなにも言わないで」
「………姫、私は…」
「『どんなことがあっても姫をお守りします』でしょ。分かっているから」
聞きたい言葉は…
伝えたい言葉は…
それではない。
「おやすみなさい!」
元気よくそういうルシアに、リューイは会釈をすると、扉を開けて部屋から出て行った。
扉が閉まるのを互いに確認して、
2人は、深くため息を吐いていた。