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† 姫と剣 †
第7章 決意
「『昔は』って…。今は楽しくはないのですか?」
ルシアの問いかけに、ロイはゆるく微笑んだ後、立ち上がって髪をかき上げた。
そして、草むらに腰掛けるルシアに向き直って手を差し伸ばす。
ルシアはその手を黙って掴んで、腰を上げた。
「あっ…」
ロイに引っ張られた反動で、胸に飛び込むような形になってしまい、ルシアは慌てて体を離そうとするが、それを阻むようにロイはすかさずルシアの腰に手を添えた。
「あなたと出会ってから…隣にあなたがいないと、何も楽しくなくなってしまいました」
青い瞳。
切なさを秘める視線に、ルシアは囚われたまま見つめる。
「明日は帰国の日、ですね」
「……ええ」
「答えを…聞かせてください」
ロイの問いに、ルシアはゴクリと唾を飲む。
ついにこの時が来てしまった。
言葉を探しているうちに、ロイが片ひざをついて跪く。
そして服の中に腕を入れると、何かを掴みルシアの左手薬指にそれをはめて、手をぎゅっと握った。
「王子…っ…これは…」
薬指にはめられた指輪にルシアは目を見開く。
太陽の光を反射して、一粒のエメラルドが光る。
「ルシア姫……」
これまでになく真剣な視線に、息を飲む。
「あなたなしでは世界に色がない」
「─────────…」
「必ず…幸せにします。私の妃になってください」
改めての申し出に、ルシアは瞳を揺らす。
視界の隅に、リューイがこちらを眺めているのが見える。
それだけなのに、決めたはずの心が大きく揺れ動いてしまう。