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† 姫と剣 †
第7章 決意
帰国前日に、ここへルシアを連れてくることは、だいぶ前からロイが決めていたことだ。
何かにこだわったこともなければ、恐れたこともない。
気ままに過ごして、気ままに生きる。
この先もずっとそういう人生を過ごすものだとばかり思っていた。
それがルシアと出会ってから、変わってしまった。
最初はまだ自分を保てていた自覚がある。
だが、このアノアで時を共に過ごせば過ごすほど、心が穏やかに、そして臆病になっていった。
何より今、ルシアの返事を聞くのが怖いと思っている。
初めて、心から欲しいと思ったからこそ、手に入らなかった時の絶望に耐えられるのか……。
そして…不安になってしまう理由として、やはり『戦場に現れない敵』の存在もある。
そして、ロイは神頼みをするようにルシアの手を掴んで先ほど渡した指輪を見つめた。
ルシアの瞳と同じ色に輝くエメラルド──…
この宝石だけで、他の女性と同じくルシアの心を掴めるとは思ってはいない、が…。
「っ…──────」
少しだけ、握っていたルシアの手が緩んだことにハッとする。
ダメなのか……
力尽くで手に入れようとした事もあった。
だが、もうそうはしたくない。
無理に側に置いても、それでは満たされない。
欲しいのはやはり、ルシアの心、なのだ。
一抹の悲しみがロイの体を襲う中、ルシアは緩めた手をギュッと握り返した。
「…姫………?」
それに驚いて、ロイは顔を上げた。
「……私で…良ければ」
優しい微笑みに、ロイは放心する。
そして、ゆっくり立ち上がりながら、片眉を上げたロイは「え?」と声を返す。
「それは…私の妃になってくださるということですか…?」
信じられないとばかりのロイの反応に、ルシアはフッと笑って、こくりと頷いた。