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† 姫と剣 †
第7章 決意
部屋の中、ソファーに腰掛けながら、ルシアはグラスに注がれるワインを見つめる。
いやでも、あの時のことが思い出される。
そして、正直いい思い出ではない。
「乾杯しましょう」
ルシアは頷きながら、グラスを合わせた。
チン…と音を鳴らしたグラス。
ロイはもちろん躊躇いなくそれを口に含んでいる。
「………………」
じっとグラスを見つめたまま、中々それに口をつけることができない。
そんなルシアを見て、ロイはフッと笑って体を寄せた。
「安心してください。何も入っていませんよ」
「ごめんなさい…っ……分かっているんですけど…」
「私とあなたはもう『婚約者』、媚薬などいらないでしょう」
ドキッと胸が鳴って、それを誤魔化すようにルシアはグラスに口をつけた。
あの時と同じ甘い口当たり。
美味しいことに変わりはないのだが、やはり飲み続けることはせず、早々にルシアはグラスをテーブルの上に置いた。
優しくロイに握られた手はゆっくりと上にあげられる。
そして、ロイはそっと手の甲にキスを落とすとゆっくりとルシアの顔を覗き込んだ。
「この指輪、気に入っていただけましたか……?」
「えぇ、もちろん。こんな立派なエメラルド、初めて見ました」
「あなたの瞳の方が、綺麗ですけどね」
「っ……あ、ありがとうございます」
容赦ない甘いセリフに、顔が熱くなってルシアは手で自分の顔を扇いだ。