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† 姫と剣 †
第7章 決意
リューイは、かつて自分の家にルシアを入れた時のことを考えていた。
ある日街で突然出会った不思議な女。
いつもなら警戒するところだが、気が付けば毎日丘の上に来るのを、楽しみにしている自分がいた。
チラと見える黄金の髪に、緑色に輝く瞳。
屈託のない笑顔に、滲み出る優しさ。
たくさん会話をしたというわけでもないのに、何故か魅了され、経験がないほど胸が疼いたのは…
やはり、彼女がリューイの記憶の中の『ルシア』に似ていたからだろう。
だが、いくら胸が疼こうと、想いを募らせても意味がない。
姫付きの護衛の騎士になることは、リューイの目指すところだった。
例えルシアが覚えていなくとも、かつての約束を果たすために宮殿へ向かうことは決めていたことだ。
────────────── 約束を果たすため…俺はもうすぐここを発つ
────────────── 遠いところだ
あの日暖炉の前での葛藤が思い起こされる。
やっと約束を果たせるというのに、突然現れた彼女の面影を宿した女に心惹かれているのは、バカバカしいと思った。
────────────── だから、何もかも無意味
この恋を実らせても、あと数日で宮殿に行く自分には無意味なことだと、分かっていたのに…。