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† 姫と剣 †
第8章 刺客
もう会えないというわけではない。
むしろ、今後の未来のための前向きな、そして一時的な別れだというのにロイは胸騒ぎがしてならない。
考えを巡らせている間に、ひょこっと姿を表した男が道を阻んで、「おはよう」と声を掛けてきた。
「────────!」
すかさずルシアの前に出たリューイとロイは並んで壁を作る。そして、同じタイミングで剣を取ってその男に突きつけた。
「すご! 息ぴったり!」
両手を上げたウィルは両方に凄まれてもなお、にっこりと笑う。
「また貴様か」
「兄上、何の用ですか」
「何って、姫のお見送りだよ」
何をしでかすか分からない。
疑いの目が、リューイとロイ、双方から注がれる。
「今日はロイまで帯剣してるの?」
「どこから愚兄が出てくるか分かりませんからね」
「なるほど」と笑ったウィルは、横に顔をやる。
「だってさ、兄上。ロイは、兄上のこと、警戒しているみたいだから、気を付けて」
「………愚兄は、私のことではなく、お前のことだろう、ウィル」
スッと姿を表した第一王子イーサの指摘にウィルはわざとらしく「えー?」と声を上げた。
「イーサお兄様まで」
相変わらずの仏頂面。
髪と瞳はロイに似ているが、顔立ちは中性的なロイとは異なって男らしい。
入国時以来のイーサの姿に、リューイも剣を下ろして頭を下げる。
「ルシア姫が出立されると聞いてな。父上もいらっしゃると言っていたが」
イーサの言葉に、ウィルは「げ」と声を上げた。