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† 姫と剣 †
第1章 お忍び


着替えたリューイは、カップを2つ掴むと、それをテーブルに置いた。


暖炉で暖めていたヤカンを手に取って、お湯を入れると、一つをルシアに差し出して、ルシアの隣に座る。



「あ、ありがとう……」


「寒くないか」


「うん、平気」



ルシアはニコリと笑ってマグカップを握りしめる。


暖炉と、温かい飲み物と、そしてリューイと……


すっかり微睡みながら、ルシアはチラとリューイを横目で見た。


精悍な横顔。


そっけないけど、優しくて、強くて……


考えれば考えるほど、胸が高鳴って、顔が赤くなってしまうのを、ルシアは必死に抑えて、頭を振った。


叶わない恋。


分かっているのだから、気持ちを昂らせてはいけない───





「さっきの話、だが……」


「さっき……?」


「あぁ。別にお前が毎日来ても邪魔だとは思ってない」




そっけなくも、優しい言葉に、ルシアの心臓がさらに高鳴る。




「だから、申し訳ないとかそんなことを考えるな」


「そ、う……良かった」



恥ずかしさから、ルシアは暖炉の火をじっと見つめる。




「昔…」



再び話し始めたリューイに、ルシアは顔を上げて再び見つめる。



「まだ幼いときに、ある約束をした」


「………約束………」



あぁ、と言って、リューイもルシアを見つめた。



「誰…と………?」


「……深い緑の瞳と」



そう言いながら、リューイはルシアの頬に優しく触れる。



「金色に輝く髪……」


「──────……」


「お前によく似ている……子だった」




視線が絡んで、ルシアも自分の頬に触れているリューイの手の上から手を重ねた。



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