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† 姫と剣 †
第8章 刺客
ロイの制止にも動じず、顔を見上げてくる2人に、ルシアは屈んで視線を合わせた。
「ルシアお姉さま、お気を付けて」
「またお会いしましょうね」
愛くるしい2人の微笑みを返して、「もちろん」と返事をすると、エマとリタはさらに目を輝かせた。
そして同時に振り返って今度はリューイを見上げる。
「「あなたもね」」
「………えぇ」
慌ててそう返事をしたリューイは、軽く頭を下げる。
ロイは頭を掻くとそのまま、イーサとウィルの合間を通りルシアを引き連れる。
最後の時、2人でゆっくりと話したいところだったが、家族に邪魔をされ、少し不機嫌になっていた。
噴水の前に馬車が止まっている。
リューイが自身の馬に跨る最中、ロイは手を取ってルシアを馬車の中へ誘導していた。
「王子、色々とお世話になりました」
「いえいえ、こちらこそ」
見つめ合う2人の後ろで、ウィルがムードを壊すように「またねー!」と呑気に声を掛けている。
それにロイはげんなりと顔を崩す。
「……すみません、最後までほんと」
フフっと笑ったルシアは「いいえ」と声をかける。
「正直……ウィル王子は苦手ですが……。家族の前のロイ王子の表情は好きですよ」
「っ……──────」
不意の好きという言葉に、んん、と言葉を詰まらせたロイは堪らず再びルシアの唇を塞いで抱きしめる。
「あなたという人は本当に…」
「王子っ……?」
「すぐにまたローハーグに向かいますので」
「ええ……お待ちしています」
名残惜しく、体を離したロイは、ゆっくりと馬車の扉を閉めた。